第10章:多角的分析と予測

この章で分かること

  • 多角分析で見る観点の一覧と使い方
  • AIが得意なこと/限界(過信しない)
  • 予測を「仮説+検証条件」として扱う型
  • 相関と因果を混ぜないための実務ルール
  • 定期分析(週次・月次)への落とし方
AIは複数観点から仮説・比較・予測を短時間で生成できる。
ただし出力は証拠と検証条件つきの仮説として扱う。
たとえ話

探偵が「容疑者リスト」を速く作るのと、「有罪判決」を下すのは別です。
AIはリスト作成が速い。判決(運用判断)は人間が証拠で行います。

1. 多角分析の観点マップ

一度に全部見なくてよい。怪しい象限から
変更系: アプリ変更 / 構成 / チーム / リリース頻度
負荷系: トラフィック / バッチ / キュー / 季節性・曜日
依存系: DB / キャッシュ / 外部API / ネットワーク / インフラ
品質系: セキュリティ / コスト / 過去事例
観点見る質問典型証拠よくある誤り
アプリ変更直前に何が変わった?deployment_id, commit変更と無関係な偶発を因果にする
DB遅い/拒否/ロック?スロークエリ、接続数timeout=DB故障と即断
外部API相手側の劣化?status_code, 依存latency自前リトライ増を原因と取り違える
コストいつから高い?token, 課金カウンタ推定と請求を同一視
過去事例似た症状は?過去インシデント似て非なる事象のコピペ対処

2. 予測の扱い方

予測してよい例

  • 容量枯渇の時期感
  • コスト超過の兆し
  • 再発しやすい時間帯
  • アラート増加・flaky増
  • ランブック陳腐化の兆候

必ず併記する限界

  • データ不足・欠落
  • 未経験事象
  • 相関≠因果
  • 依存誤認、時刻ずれ
  • モデル変更、ハルシネーション
予測カードの型
主張: 来月ディスクが枯渇しうる
根拠: 直近90日の増加率
反証の見方: 削除バッチが動いた日を除いても同じか
検証: 来週の実測で傾きを確認
外れたとき: 何を学習として残すか
「来週壊れる」と言われても、検証条件が無い予測は運用判断に使わない。

3. 定期への落とし込み

周期多角分析の使い方成果物
オンデマンド障害中の仮説洗い出し初動シート
週次再発・ノイズ・依存の劣化改善チケット3件以内
月次容量・コスト・KPIセット投資判断材料
運用担当者週次で「相関っぽいが未検証」リストを残す
PG予測を検証するメトリクス・ログを実装する
SE予測カードを監視設計と週次レビューの項目にする
PM予測だけでロードマップ変更しない
経営層外れた予測の学習報告も評価する

4. 現場適用:週次の「仮説ボード」

ホワイトボードでもチケットでも可
仮説 | 根拠 | 反証の見方 | 検証担当 | 期限 | 結果
------|------|------------|----------|------|----
依存API劣化 | latency↑ | 相手側status | SE-A | 金 | 棄却
デプロイ相関 | 直後発生 | 他リージョン比較 | Dev | 水 | 採択

週次では「結果」列が空の仮説を持ち越さない。検証なき仮説はボードから外します。

ふりかえり

  • 直近の分析で観点を2つ以上使ったか
  • 予測に検証条件が付いていたか
  • 相関を因果として会議で話していないか