この章の読み方 — まずここから
AI ツールを仕事で使うすべての人向けの章です。専門用語はできるだけ使わず、「何をしてはいけないか」「困ったとき誰に聞くか」だけ覚えれば大丈夫です。
30 秒で覚えること: 社内の決まりどおりの経路(LLM ゲートウェイ)を使い、顧客名・パスワード・個人情報は AI に入れない。
AI チャットは「社外の相談相手」に話すのと同じ
ChatGPT や Copilot などの生成 AI は、とても便利な「文章やコードを作ってくれる助手」です。ただし、裏側ではインターネット上のサービスにあなたの入力が送られます。
| たとえ | 意味 |
|---|---|
| 電話で友人に相談 | 相手に内容が伝わる |
| 社外の知り合いにメール | 相手が覚えている可能性がある |
| AI チャットに貼り付け | 入力内容がサービス側に届く(学習に使われない契約でも、送信そのものは発生) |
だから「誰にも見せないメモ」をそのまま貼るのは危険です。
送ってはいけないもの(覚えやすい 5 つ)
| # | 送らないもの | なぜダメか |
|---|---|---|
| 1 | パスワード・API キー | 漏れるとシステムに侵入される |
| 2 | 顧客の本名・社名・案件の詳細 | 契約違反・信用問題 |
| 3 | 個人情報(電話番号、マイナンバー、住所など) | 法律・社内規程違反 |
| 4 | 未公開の経営情報(M&A、決算前の数字など) | 情報漏洩 |
| 5 | 他人のメール・チャットの全文 | プライバシー侵害 |
迷ったら 送らない が正解です。「たぶん大丈夫」は避けてください。
送ってよいことが多い例
- 公開されている技術ドキュメントの要約
- 自分で書いた、顧客名を入れていない下書き
- エラーメッセージ(本番の接続文字列や顧客 ID を除く)
- 一般的なビジネスメールの書き方の相談(固有名詞なし)
シャドー AI とは — 個人で勝手に契約したツール
「会社の許可なく、自分で ChatGPT Plus や個人 API キーを仕事に使う」ことを シャドー AI と呼びます。
| 個人契約の問題 | 会社にとってのリスク |
|---|---|
| 請求がバラバラ | コストが見えない |
| ログが残らない | 漏洩しても追えない |
| 契約がバラバラ | データが学習に使われる可能性 |
便利だから個人アカウントで…は、後から会社全体で困るパターンです。社内ゲートウェイ経由(第 2 章)を使うと、同じように便利さを保ちつつ、会社が守れる仕組みに乗れます。
AI を使った詐欺に気をつける
「社長からのメール」「緊急の振込依頼」など、AI で作られたそれっぽい文面が増えています。
| 見分けるコツ | 行動 |
|---|---|
| いつもと違う口調・急ぎすぎ | そのメールのリンクは開かない |
| 送金・パスワードを求める | 電話や対面で本人確認 |
| 添付の請求書が不自然 | 経理・上司に確認 |
AI そのものが悪いのではなく、悪用される側面がある、と覚えておいてください。
社内で守る 3 つの約束
- 決められた経路を使う — 社内 LLM ゲートウェイ・承認済みツールのみ
- 迷ったら聞く — 上司、PM、セキュリティ、ヘルプデスク(第 17 章の連絡先)
- 怪しいと思ったら止める — 送信前に一度止まる習慣
ゲートウェイがあると何が変わるか(第 2 章につながる)
社内 LLM ゲートウェイ は、AI への出入り口に「改札」を置くイメージです(第 4 章の 4 つのたとえと同じ考え方)。
| 改札の役割 | あなたにとっての意味 |
|---|---|
| 認証 | 誰が使ったか分かる |
| 検査(DLP) | 危ないデータを送れないよう止める |
| ログ | 後から確認できる |
| 予算 | 使いすぎを防ぐ |
技術の詳細は開発者向けの第 9 章、ルールの作り方は第 3 章を読む人向けに書いてあります。一般の方は本章の 3 つの約束だけで十分です。
ここで一旦終了 OK: 本章まで読めば、日常業務で必要な最低ラインはクリアです。以降は担当者・専門職向けです。
よくある質問(初心者向け)
| 質問 | 答え |
|---|---|
| 社内文書を要約してもいい? | 分類が「社内限定」までならルール次第。顧客データは原則 NG |
| スマホのアプリでも同じ? | 仕事用データを入れるなら、会社が許可したアプリだけ |
| 間違えて送ってしまった | すぐ上司とセキュリティに連絡(隠さない) |
| 勉強目的の個人利用は? | プライベートの話題・会社の機密は入れない(第 3 章の個人利用ガイド参照) |
次に読む章
| あなたの立場 | おすすめ |
|---|---|
| 一般社員・事務・営業 | 本章で十分 → 困ったら第 15 章の申請窓口 |
| 開発者 | 第 9 章(IDE の設定) |
| ルールを作る担当 | 第 3 章 → 第 4 章 |
| セキュリティ・インフラ | 第 6 章 → 第 7 章 |
研修 — 確認テスト(全社員コース A)
所要 5 分。自己採点。4 問以上正解でコース A 完了。
| # | 問題 | 正解 |
|---|---|---|
| 1 | 顧客の本名と案件金額を AI に貼って要約を作ってよい? | いいえ(契約・信用問題) |
| 2 | 公開技術ブログの URL を要約させるのは? | 原則よい(固有名詞・未公開情報なし) |
| 3 | 個人の ChatGPT Plus を仕事に使うのは? | シャドー AI — 社内経路を使う |
| 4 | パスワードをマスクして「形式だけ」見せるのは? | いいえ(送らない) |
| 5 | 迷ったときの行動は? | 送らない・PM/情シスに確認 |
ケース演習 — 送ってよい?(10 分)
| シナリオ | あなたの判定 | 模範解答 |
|---|---|---|
| エラーログ(DB 接続文字列含む)を AI に貼る | NG — 秘密情報を除去してから | |
| 社内 Wiki の公開手順書を要約 | OK | |
| 顧客メール全文を翻訳依頼 | NG — 顧客情報 | |
| 「Python でリストソート」のコード質問 | OK |
受講後アクション: 社内ゲートウェイ(または承認済みツール)の URL をブックマークし、個人 API キーを業務 PC から削除する。
v1.10 — 学習不使用でも個人情報は送らない
「会社契約で学習に使われないから、顧客データも入れてよい」は誤解です。
| 概念 | 意味 | あなたへの影響 |
|---|---|---|
| 学習に使われない | 入力がモデル訓練に使われない | 契約・プランで保証 |
| 保持されない | 事業者サーバーに入力が残らない | 多くの場合、監視目的で一時保持があり得る |
個人情報だけは、契約条件に関係なく そもそも AI に載せない が絶対条件です(第 3 章契約チェック C-9 参照)。
よくある質問(追補)
| 質問 | 答え |
|---|---|
| エンジニアが DB を調べさせたとき、結果に氏名が載ると? | プロンプトに書いていなくても、コマンド出力が次の推論で事業者へ送られます。必要カラムだけに絞る(第 7 章) |
| Issue にログを貼るときは? | エージェントが読む前提で、貼る前にマスク・ダミー化(第 10 章) |